金沢は道に金が敷き詰められた街である……いや、敷き詰めてはいないが、それでもキラキラと輝くこの素材が街中にあふれている。とはいえ、決して下品な見せ方ではない。「金沢」という名は文字通り「金の沢」を意味し(金を掘り当てた農夫の伝説に由来する)、この金属は街のあちこちで顔をのぞかせる。芸者が今も活躍する魅力的な「ひがし茶屋街」を擁することから「小京都」として広く知られる金沢は、観光地としての人気が急上昇している。街の見通しは明るいが、本家・京都のように人で溢れかえり、地元住民も観光客もうんざりするようなリスクもはらんでいる。そこで本稿では、もう一つの金沢として、いくつかのスポットを紹介したい。輝きを放つ場所ばかりだが、シアトルからシドニーまで、世界中の人々のGoogleマップに「行きたい」と保存されている類のスポットではないかもしれない。そして、目の玉が飛び出るほど高価な金箔ソフトクリームに出会うこともない。
そう、兼六園は壮麗で、地元の城も訪れる価値はある(特に巨大な増築工事が完了したら、なおさらだ)。ひがし茶屋街は絵のように美しく(ひと息つきたいなら「日本酒真琴」がおすすめだ)、金沢21世紀美術館はいつ訪れても興味深い。そしてもちろん、駅そのものをのんびり眺めて回るのもいい。しかし、人混みを避けて、街とその周辺のもう少しローカルな一面を味わいたいなら、ぜひこの先も読み進めてほしい。「ジャパン・ビア・タイムズ」を読んでいる以上、ブルワリーの紹介もしないわけにはいかないし、移動手段にも車(タクシー以外)は想定しない。ただし、これから紹介するブルワリーはビールを造っていない。「金澤ブルワリー(Kanazawa Brewery)」「Brew Classic」「Oriental Brewing」「わくわく手づくりファーム」「Heart & Beer 日本海倶楽部」について詳しく知りたいなら、別の記事に譲ることになるだろう。そう——今回訪れるブルワリーが造っているのは、酒と醤油なのだ!
いざ、「骨揺らし号」へ!
金沢駅から、まずは野町駅行きのバスに乗ろう。02番のバスで30分ほどあれば到着する。野町駅は北陸鉄道石川線の終点であり、日本でもっとも整体効果の高い電車の発着駅でもある。ここから進める方向は一つだけ。次に来る鶴来行きの電車に飛び乗って、しっかりとつかまっておこう。人生でいちばんガタガタで、いちばん絶景の30分が——たった540円で味わえる。
厳密に言えば鶴来は金沢市外だが、見どころが多すぎて紹介しないわけにはいかない。訪問を有意義なものにしたいなら、駅の真向かいにある「白山市役所鶴来支所」に立ち寄ろう。ここでは一日およそ300円で、ほぼあらゆる種類の自転車を借りられる(17時までに返却)。横着したいなら700円でe-bikeにすればいい。二輪を手に入れたら、できることは一気に広がる。
筆者のいちばんのお気に入りは、「手取キャニオンロード」を走ることだ。廃線となって久しい、旧・北陸鉄道の線路跡をたどるコースで、比較的平坦(最初は!)、舗装は気持ちよく、自動車は完全に進入禁止。白山の山麓にある瀬女までたどり着くだけの体力があれば、手取峡谷を抜け、迫力満点の綿ヶ滝、いくつもの水田、たぶん何頭かのクマやサル、そして息をのむような白山の眺望と、到底受け止めきれないほどの美しさに出会える。瀬女まで到達できれば、金沢工業大学白山麓キャンパスにはプライベート温泉があり、なかなか特別なアイスクリームも待っている(アイスクリーム話・その1)。さらにホルモンラーメンも——内臓が呼んでいるなら、ぜひどうぞ。

そこまでの体力はないという人には、もっと文化的でありながら、同じくらい心を打たれる選択肢がある。「白山比咩神社」へ向かい、絶品の大判焼き(小豆あんを詰めた小さな生地のお菓子)を頬張ったら、小川のせせらぎを聞きながら、木々の間を抜ける幅広の石段をゆっくりと登っていこう。神社そのものも見事だが、それ以上に、木々の大きさと静けさが、まるでジブリ作品のような穏やかさを呼び起こし、茶屋街の雑踏が遠い世界の出来事に感じられるはずだ。禅は性に合わないという人には、大きな丘から飛び降りる遊びはどうだろう。気になる?それなら、できる。「獅子吼高原パラグライダースクール」では初心者を喜んで受け入れている。筆者自身は試したことがない——自分にかかる重力が物理法則にあまりに忠実すぎる気がして及び腰だ——が、無謀にも空へ飛び出していく人々を何人も見てきた。もちろん、飛ばずに「獅子吼高原」までハイキングするか、ゴンドラで上って、山頂から海まで見渡せる180度の石川のパノラマを堪能してもいい。地上に戻ってきたら、ピッツェリア「もく遊りん」を強くおすすめしたい。素敵な木工品ショップも併設されている。
ハチや蝶など、虫に対するスタンス次第ではあるが、鶴来の中心部から徒歩圏にある「石川県ふれあい昆虫館」もぜひ訪れてほしい。実際、すばらしい施設で、最後は蝶でいっぱい——本当にいっぱい——の植栽の中を一周できるエリアにたどり着く。小さな子ども連れなら数時間気持ちよく過ごせる。しかも入館料はとても安い。鶴来にはまた、「小堀酒造店」という酒蔵もある。1716年創業、白山から流れ出る澄み切った水を仕込みに使うことで知られる。立ち寄って、「萬歳楽」や「萬歳楽 純米大吟醸」を一、二本買って帰るのもいい。ついでに、受賞歴を持つ「萬歳楽の梅酒」もぜひ。すぐ近くには「ぱん処 まる濱屋」があり、パンが恋しくなったときに頼りになる。あるいは、街のあちこちに点在する和菓子店を覗いて回ってもいい。鶴来を離れる前にもう一つ。うだるような夏の最中なら、筆者は手取川に向かうのが何より好きだ。バーベキューを楽しむ人々と、浅瀬で水遊びをする子どもたちの姿が広がる。少し川を遡って200メートルほど上流に行くと、何千年にもわたってあの澄んだ激流に削られた岩がある。形はちょうど座面のようで、ずぶ濡れになるのを覚悟さえできれば、肩への治療的なマッサージを受けられる。これで、金沢へ戻る「骨揺らし号」にも、なんとか心身を整えて乗れるはずだ。
醤油(しょうゆ)しようか?
山の話は終えて、今度は海岸沿いへ向かおう。金沢は山と浜のあいだに絶妙に位置していて、その両方を一日で楽しむこともできる。日本の西側ではよく見かけるあの悲しい光景——プラスチックボトル、ブイ、その他の漂着ごみの数々——もここでは免れていないが、それでも海辺で楽しめることはたくさんある。金沢市内で電動アシスト自転車「まちのり」を借りれば、犀川沿いを大野地区までのんびりと走れる気持ちのよいルートがある。「おとCafe」でクロワッサン・ワッフルを味わうもよし、上質なジャズの音響セットでマスターが奏でる音楽ライブを楽しむもよし。そのあとはすぐ近くの「健民海浜公園 」へ。広大な水のレジャーパークがあり、池を擁する大きな雑木林にはバーベキュー区画も多い。野鳥もたっぷりで、バードウォッチャーの聖地になっている。比較的こまめに清掃が行われている数少ないビーチの一つにも近いので、海水浴をしたい人にもおすすめだ。ただし、お盆を過ぎたあたりからクラゲが出没するので、ご注意を……
ここから少し北に位置する大野のブルワリーへ案内しよう。金沢に詳しい人なら、新しめの「Brew Classic」を絶賛するに違いないと予想したかもしれない。確かに、2021年の創業以来、短い期間で数々の賞を受賞しているし、金沢の活気ある香林坊エリアにスタイリッシュなタップルームも構えている。ただし、ブルワリー自体は一般公開されていない。代わりに足を運んでほしいのが、「ヤマト醤油味噌『糀パーク』」だ。そう、醤油である!この地域には醤油の蔵がいくつかあるが、「糀パーク」は観光客にも親しみやすい雰囲気で、何より、アイスクリームがある(アイスクリーム話・その2)。意外なことに、そのアイスクリームが甘酒味と醤油味の二択ながら、驚くほど美味しい。先日訪れたときは醤油味を選んだが、なんともうま味が最高だった。蔵の見学ツアーも用意されており、味噌づくり体験のワークショップもある。複数の併設レストランでは、より伝統的なかたちで醤油を味わうことができる。手に醤油をこぼしてしまっても大丈夫——「麹の手湯」体験ができるからだ。ウェブサイトによれば、肌が明るくなり、そばかすが薄くなる効果もあるという。ただし、これについては筆者からは何も保証できない。筆者の手はもう十分に明るい、ありがたいことに。

さて、飲みに行こう!
そろそろビールの時間だ。筆者の第一候補は、「Craft Beer Dive Futa’s」。フータの父親は九谷焼の陶芸家で、店で使われる器はどれも一点ものの逸品ばかり。BBC Radio 6 Musicがゆるやかに流れる店内で、彼が出してくれるのは美味しいおつまみの数々(おすすめはエンパナーダと、クレームフレッシュをのせたオープン餃子)と、日本国内外のさまざまなクラフトビール。8タップが常時ローテーションされていて、いつ訪れても素晴らしいセレクションが楽しめる。金沢21世紀美術館もすぐそこ—— 一杯やりながら、興味深い話題に花を咲かせるにはぴったりの距離感だ。

そこから少し千鳥足で歩いた先にあるのが「CHE」。とても小さな店だが、屋外席があり、ヴィンテージ感あふれる店内、そして実に興味深いビアセレクションが揃う。主にベルギーから輸入したビールが並ぶため価格はやや高めだが、金沢で「Monk’s Stout Dupont」が飲める店はおそらくここだけだろう。CHEは「新竪町通り」のすぐ脇に位置している。この通りには、雰囲気のある古着屋やヴィンテージショップ、コーヒースタンドが並び、もう一つおすすめしたいスポットも——気軽なカレーと豊富なビアフリッジを揃える「スパイススタンド 青春.」だ。
続いては、賑やかな夜の街・片町へ向かおう。金沢は海産物——ひいては食全般——で名高く、おすすめの名店をすべて紹介していたら、記事ではなく一冊の本になってしまう。そんな中で、ひときわ目を引く寿司店が「洋次郎」。定員はわずか七人なので、要予約。同様に、シェフ自ら食材を仕入れる(猪まで!)「自分ち」も、何カ月も前から計画する必要がある。今回は手堅く、ニューヨークスタイルのピザを楽しめる「Pizza Horizon」をすすめたい。一切れ頬張ったら、ほんの数歩で「香林坊ジビルバ」へ。こちらはより「パブ」に近い雰囲気で、木目調の壁にビールのステッカーが所狭しと貼られ、上階にはライブハウス、店内ではビア樽がスツールと場所を奪い合っている。「Futa’s」と同様、いつ行ってもクラフトビールの揃えは充実していて、本格英国式とは言えないものの、なかなか美味しいフィッシュ&チップスも味わえる。

夜更かし派には、もう二軒おすすめしたい。一つ目は、「Craft Beer Freaks Sink」(こうした店名はいったいどこから出てくるのだろう?)。片町から徒歩約10分、いわゆる「忍者寺」——正式名「妙立寺」——のそばにある。妙立寺は紛れもない観光名所だが、この一帯はお寺が点在する美しいエリア「寺町」と呼ばれる地区にある。Sink自体は小さな店だが、店内の半分は冷蔵ケースで占められ、めまいがしそうなほど多彩なビールが並ぶ。足を運ぶ価値は十分にある。最後にもう一軒、片町に戻って、有名な緑色の橋・犀川大橋のすぐそばに「Sturgis」という小さな店がある。とある雑居ビルの6階。薄暗く、まるでターディスのように時空を歪める穴のような空間が、あなたを引き込み、マスターのギターで全力でリフを刻ませ、朝7時には自分が誰で、ここがどこで、いったいいつなのか分からないまま外へ吐き出してくれる。クラフトビールはないが、特別枠として外せない一軒だ。
金沢は素晴らしい街だ。本稿は、深い歴史と文化、そして率直に言って美しいこの街——筆者が誇りを持って「故郷」と呼ぶ街——のソフトクリームに乗せた、ほんの一枚の金箔にすぎない。ぜひ、訪れてみてほしい。


