千葉県は見過ごされがちだが、訪れる価値のある旅行先だ。多くの人にとって千葉は、東京の延長にある都市圏の一部、あるいは首都圏のベッドタウンという印象が強いかもしれない。確かに、県の北西部は開発が進み、都市的な景観が広がっている。しかし、少し足を延ばせば、のどかな丘陵地帯や比較的人の少ない長い海岸線が続き、気軽に楽しめる心地よい冒険の舞台が広がっている。
JAPAN BEER TIMESのスタッフの何人かは、もう20年近くにわたり、千葉の海の魅力を家族や友人に語り続けている。春から夏にかけては穏やかで温かな海が広がり、秋から冬にかけては(特に台風の時期には)スリル満点の波が立ち、ウォータースポーツ好きにとっては一年を通して楽しめる場所だ。海に入らない人でも、沿岸部にはゆったりとした親しみやすい雰囲気の町が点在し、比較的手頃な宿泊施設や個人経営のカフェも多く、ただのんびり過ごすだけでも訪れる価値がある。さらに言えば、千葉の海岸への道のりそのものも、旅の楽しみの一部となるだろう。
快適な特急わかしおは、便利なことに東京駅から発車し、千葉県内を横断して、いくつかの小さな海沿いの町に停車しながら、私たちお気に入りの海辺の隠れ家、鴨川(駅名は安房鴨川)に到着する。東京駅では、国内外のクラフトビールが豊富に揃うリカーズハセガワで「トレインビール」(乗車中に楽しむためのビール)を買い込んでから乗車するのが旅の恒例だ。旅の途中、列車は千葉の内陸部の丘陵地帯をまるで空中を浮遊するかのように進み、やがて海岸沿いをくねくねと走り、トンネルをいくつも抜けていく。その車窓からは千葉県の地形を存分に堪能できる。また、東京駅からは(本数も多く料金も安い)バスも出ているので、そちらを利用するのも一つの手だ。
鴨川を高級リゾート地と呼ぶのは少し違和感があるが、確かに全国的に知られる観光名所の鴨川シーワールドもある。この海岸沿いには、海を一望できる豪華なホテルが点在し、温泉付きの施設もある。とはいえ、町全体には昭和レトロな要素が色濃く残り、のんびりとしたビーチライフの雰囲気と心地よく調和している。宿泊施設も全体的にやや古めかしい印象で、気軽に泊まれるゲストハウスや旅館も多く、予算重視の旅行者にも嬉しい場所だ。町の主要産業は漁業で、複数の漁港が今も現役で稼働している。周囲の丘には田んぼや野菜畑も広がり、のどかな景観をつくりだしている。私たちはよく、小さな魚屋に立ち寄り、その日水揚げされたばかりの魚を買い、新鮮な地元の野菜と一緒にバーベキューで調理して楽しむことがある。鴨川に来たなら、ぜひ海鮮を味わってほしい(菜食主義の方には、地元の野菜をおすすめする)。
ビーチ以外の楽しみを求めるなら、町の南にある魚見塚展望台まで丘の階段を登るのがおすすめだ(漁師の守り神ともいわれる女神像がそびえ立っているため、簡単に見つけられるはずだ)。展望台からは、この地域一帯を360度見渡せる絶景が広がり、その眺めだけでも訪れる価値がある。また、海岸沿いや町中を自転車で走るのも開放感があって心地よい。自転車を持参できない場合でも、安房鴨川駅前の観光案内所でレンタサイクルが利用できる。歴史や文化に関心があるなら、13世紀の仏教僧で法華宗の開祖・日蓮の生誕地を訪れるのもいいだろう。鴨川周辺で生まれた日蓮は、漁師や海女といった被差別階層の出身でありながら、やがて仏教界に大きな影響を与える存在へと成長した。誕生地には誕生寺が建てられ、その壮麗な建築は、日蓮の信仰と世界的な宗教的影響力を象徴する存在となっている。

鴨川からさらに北へ約60キロ続く海岸線には、千葉県立九十九里自然公園が広がっている。東京に近いこともあり、夏のピークシーズンには混雑することもあるが、アクセスの良さや、地元住民と観光客の双方に配慮して整備されたインフラのおかげで、訪れる価値のあるビーチスポットとなっている。とはいえ、私たちはやはり鴨川へ向かう心地よい旅路を好む。このルートは、ビーチのすぐ近くまで行けるのが大きな魅力だ。一方、東京から伸びる総武線もこの沿岸部の多くの駅に停車し、駅からわずか数キロ歩けば、癒しの砂浜、太陽、波が待っている。また銚子駅からは、昔懐かしい雰囲気の銚子電鉄が銚子半島の小さな町々を走っており、沿線に点在するビーチや快適な宿泊施設にも気軽に足を延ばせる。
千葉半島の西側は、小さな町々と穏やかな海が点在し、賑やかさはないものの、静かに過ごしたい人にとっては魅力的なエリアだ。海沿いを走る内房線でアクセスできるのも便利だが、ここで少し趣向を変えた行き方を提案したい。東京や横浜から直通で行ける横須賀からフェリーに乗り、湾を横断して小さな港町、浜金谷へ渡ってみてはどうだろう。そこからは、千葉で最も興味深いスポットの一つといわれる鋸山へ足を運ぶのがおすすめだ。

すでに写真などで目にしたことがあるかもしれないが、鋸山には、日本寺の住職の発願によって岩肌に刻まれた巨大な日本寺大仏や観音像がある。寺の境内は、標高約330メートルある山の麓から山頂近くまで広がり、曲がりくねった石段沿いには数百体の仏像が点在している。歩いて登ると、まるで考古学の冒険をしているような気分になる一方で、かなりの運動にもなる。体力に不安があればロープウェーも利用できるが、歩けるなら登山ルートをおすすめしたい。山頂付近には地獄のぞきと呼ばれる絶景スポットもあり、この地の文化的な背景にも思いを馳せることができる。というのも、日本が19世紀後半に近代化を進めていた頃、この山は石材の採掘場として利用されていた。当時、険しい山道から石を運び下ろしていたのは、ほとんどが車力と呼ばれる女性たちだった。その歴史は、今も山沿いの案内板で知ることができる。

これまでに紹介した千葉の海沿いの町や観光スポットに加えて、広大でのどかな内陸部にも見どころは数多くある。サイクリング好きで体力に自信がある人には、走りがいのあるルートが豊富にそろっている。そうでない人は車で巡るのがおすすめだ。鉄道好きには、田園風景の中を走る小湊鉄道やいすみ鉄道がぴったりだろう。房総スカイラインも人気で、濃溝の滝や亀岩の洞窟、近くの三石山観音寺、ハイキングコースや点在する温泉リゾートなど、途中に立ち寄れるスポットが充実している。素朴な宿を好む人には、ゲストハウスやキャンプ場が各地にあり、気軽な滞在を楽しめるのも魅力だ。
クラフトビールを楽しめる場所
千葉にはクラフトビールを楽しめる場所が数多くある。多くは東京に近い都市部のバーやタップルームで、その中には長年営業を続け、クラフトビール業界を支えてきた店も少なくない。例えばBeer O’clockは、私たちも自信を持っておすすめできるカジュアルな名店の一つだ。もちろん、探せば他にも魅力的な店はたくさん見つかるが、ここではあえて、千葉のビールシーンの魅力を体現する3つのブルワリーに焦点を当てて紹介したい。
最も有名なのは、東京ディズニーリゾート内の商業施設イクスピアリで醸造されているハーヴェスト・ムーンだ。長年ブルワーとして活躍する園田智子は、ワールド・ビア・カップで複数のメダルを獲得し、その実力は世界的にも高く評価されている。2022年にはピルスナーで金賞を受賞しているが、彼女といえばやはり、芳醇な味わいのシュバルツ(ドイツ発祥のダークラガー)を思い浮かべる人が多いだろう。ハーヴェスト・ムーンのビールは、醸造所に隣接する大型ビアレストラン、ロティズ・ハウスで味わえるほか、千葉や東京の小売店でも提供されている(新橋のBrasserie Beer Blvd.では、運が良ければ園田本人に出会えるかもしれない)。
比較的新しい存在だが、千葉ののどかで自然豊かな雰囲気を感じさせるのが、本号でも紹介している海岸醸造だ。この記事の執筆時点では、海辺の醸造所にテイスティングルームを建設中で、本誌が発行される頃にはおそらくオープンしているだろう。近くを訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてほしい。

最後に紹介したいのが、ベテランブルワーのクリス・プールが手がける潮風ブルーラボだ。彼はもともと、千葉市にある自身のタップルーム、潮風ブルースタンド蘇我のために、別の施設でビールを醸造していたが、現在は自社ブルワリーを構え、潮風ブルースタンドのぶとという新たなタップルームも展開している。プールがつくるビールは、アメリカンスタイルをはじめ、さまざまな伝統的なスタイルを見事に表現したものばかりだ。また、彼は千葉で新たに誕生した複数のブルワリーの指導役も務めている。もしタップルームで彼を見かけたら、ぜひおすすめのビールを尋ねてみてほしい。また、プールと彼の千葉のビール仲間たちは、地元の観光スポットや日帰り旅行先、食事処、バーなどのリストも提供してくれた。詳細は以下を参照。
- クラフトビア
- 潮風ブルワリー, 2か所: 潮風ブルースタンド蘇我と潮風ブルースタンドのぶと
- 幕張ブルワリー ( 海浜幕張)
- ワイワイジーブルワリー&ビアキッチ (本千葉)
- ビアオクロック
- ミハマベース, 2か所:: 稲毛海岸と幕張
- レストラン
- 活動
- 日帰り
- スポーツ


