秋田の知られざる魅力を探る
秋田県の魅力は、有名な観光地だけではありません。角館の有名な武家街を訪れたり、滝ケ入渓谷のトンネルを抜けながら鮮やかな紅葉を眺めたり、乳頭温泉で何世紀もの歴史を持つ温泉に浸かったり、田沢湖の静かな湖畔でキャンプをしたりしたことがあるかもしれない(そうでない人もぜひ!)。(もしそうでないなら、ぜひそうしてほしい!)しかし、これらのアトラクションの他にも、秋田の野趣あふれる、あまり探検されていないエリアでは、より深い冒険が待っている。
旅の始まりは田沢湖駅から
秋田の大自然を巡る旅では、田沢湖駅が絶好の出発点である。これは東北地方の北部全般にいえることだが、新幹線を降りたあとは、レンタカーを利用すると移動が格段に楽になる(ただし、入念に計画を立てれば、公共交通機関やシャトルバスでも移動は十分可能である)。田沢湖駅から、まずは乳頭温泉郷近くのビジターセンター兼温泉施設「アルパこまくさ」を目指そう。バスでも車でも簡単に行くことができる。
アルパこまくさでは、温泉に入ったり、地元で撮影された美しい自然の写真を鑑賞することができる。なかでも、1971年の火山噴火を捉えた迫力ある写真は必見だ。また、ここは、名山として知られる秋田駒ヶ岳への出発点でもある。アルパこまくさから八合目登山口までは、週末にバスが運行しており、平日にはレンタカーなどのマイカーでもアクセスが可能だ(注意:6月1日〜10月20日の土曜日、日曜日、祝日や、花の開花期である6月21日〜8月15日の平日には、自転車を含むマイカーの乗り入れ規制が実施されており、この期間中はバスやタクシーなどの許可車両のみ通行可能)。八合目からは短時間で楽しめる登山コースがあり、複数の峰やカルデラ、高山植物、最近の噴火で固まったマグマなどの幻想的な風景を一望できる。この独特の自然美は半日でも堪能できるが、お弁当を持参して一日中その異世界に浸るのもよい。
秋田駒ヶ岳での冬の冒険
12月から3月にかけて、秋田駒ヶ岳はバックカントリースキーやスノーボードを楽しむ人々のための雪の遊び場と化す(訳注:バックカントリーとは、整備されたスキー場でなく、自然の森や林の中を滑ること)。彼らは、山頂付近の素晴らしいパウダースノーを求めて、アルパこまくさから雪山を登っていくのだ。スキーやスノーボードをしない人でも、スノーシュー(雪上歩行具)を使ってハイキングを楽しむことができるが、冬の登山は時間がかかるため、丸一日かかる覚悟が必要だ。晴れ渡った青空の日には、スキーやスノーシューの足跡が駐車場から山頂に続いているが、GPSアプリ(ヤマップなど)を使ったり、筆者のようなガイドを雇ったりすることをおすすめする。

森吉山の樹氷群とマタギ文化を探る
秋田駒ヶ岳から北西には森吉山がそびえ、極上のパウダースノーを求めてウィンタースポーツ愛好家が阿仁スキー場に集結する。ここでは、バックカントリーやスノーシュートレッキングを楽しむことができる。ゴンドラで山頂付近まで行くと、「スノーモンスター」と呼ばれる有名な樹氷群を観賞することもできる。森吉山は日本三大樹氷の一つで、ほかの蔵王(山形県)と八甲田(青森県)と比べると訪れる人が少なく、こうした自然の素晴らしさを目の当たりにするには最高の場所であることは間違いない。
緑が美しい春の終わりから秋にかけての時期になると、秋田の伝統的な冬の熊猟師であり、熟練の猟師であり、そして森の守護者でもあるマタギの故郷を訪れる観光客が増える。地元のマタギである織山英行は、森吉山の麓でゲストハウスを営んでおり、周辺の山々へのガイド付きハイキングツアーを提供している。彼のツアーは4〜6時間で、まずはお清めと山の女神への祈りの儀式から始まる。参加者は野草を採りながら、マタギの歴史や精神的信仰について学ぶ。ベースキャンプでは、伝統的な方法での火起こしを手伝い、熊肉を使った料理を楽しむことができる。熊肉は珍しいと思うかもしれないが、意外にも美味しく、一緒に採った野草とともにグリルやスープにすると驚くほど絶品だ。彼のツアー内容は季節ごとに異なり、秋にはキノコ狩りをメインとしたツアーが提供される。
マタギ文化に興味がある人には、15代目マタギが経営する「松橋旅館」もおすすめである。ここではガイドツアーは提供されていないが、熊の毛皮の敷物に座り囲炉裏を囲んで、地元で採れた食材を使った料理を楽しむことができる。オーナーからはマタギについての話も聞くことができ、それ自体が貴重な体験となる。滞在中にはぜひ、近くにある日本で二番目に美しいといわれる「安の滝」も訪れてみてほしい。

玉川温泉と大地の治癒力
森吉山から東に進むと、1680年頃に地元のマタギによって発見された玉川温泉がある。この温泉は日本で最も酸性度の高い川を水源としており、毎分9千リットルもの水が地中から湧き出ている。源泉のpHは1.2と強酸性で、温度は98度に達する。ここでは地熱を利用した天然岩盤浴も体験でき、人気のスポットとなっている。訪れる人々は、地面にタオルなどを敷いて横たわり、大地の温もりを感じることができる。また、ここで産出される「北投石」という微量のラジウムを含む鉱石の治癒効果を求めて、日本中から多くのがん患者も訪れている。
天然岩盤浴がある玉川温泉自然研究路は遊歩道になっているので、ぜひ散策してみてほしい。この遊歩道は黄色い硫黄の川に沿って続いており、ところどころで地面から噴湯や噴気が立ち上がり、近くを通るとその轟音で会話がかき消されるほどの迫力だ。入場は無料(駐車料金は200円)で、これらすべてを見ることができる。また、奥の方には秋田焼山の登山口もある。
後生掛温泉と火山の風景
玉川温泉からバスか徒歩で後生掛温泉へ向かうことができる。この温泉ではさまざまな入浴体験が楽しめるが、とくに名物となっているのが、木箱から首だけを出して全身で温泉蒸気を浴びる「箱蒸し風呂」だ。また、泥風呂も評判が高い。
温泉周辺には活火山地帯が広がり、自由に散策できる遊歩道が整備されている。泥水泉、間欠泉、沸騰する湖など、さまざまな火山現象を間近で見ることができる。その風景は玉川温泉のものとはまったく異なるので、ぜひどちらも訪れてみてほしい。ここでは詳しく触れないが、後生掛温泉を訪れた際には、後生掛の地名にまつわる、地獄谷での心中に関する悲しい物語を耳にするだろう。なお、一人で遊歩道を歩く場合は、必ず熊よけの鐘を鳴らしながら歩こう。
秋田県の観光協会は現在、マタギ文化の振興と、狩猟や採集に使われていた古道の復元に取り組んでおり、2025年夏までにこれらのルートを観光客に開放する予定だ。こうした取り組みにより、秋田の大自然の奥深くで、さらにワクワクする冒険に出会うことができるかもしれない。

クインラン・フェリスは24年前に日本に移住し、現在は盛岡を拠点に活動する熱心なハイカー、アウトドアアドベンチャーガイド、ユーチューバー、そして国際利き酒師である。詳しくはこちらから: gonorthjapan.com gonorthjapan.com


