ショーン・エリスは11年間日本で働いていたが、現在はアメリカに戻り、オーナー兼醸造家としてビール業界でプロとして4年間活動している。ジャパン・ビア・タイムズからの追記: 日本にはたくさんの優れたベルギービールバーがあり、KONISHIは『カンティヨン・グース』を輸入している。このビールは、ベルギービールバーでも見つけやすいが、KONISHIのウェブサイト(
www.konishi.be). なお、彼らのウェブサイトには、全国のベルギービールバーを検索できるページもある。
太くて大きいガラス瓶に巻かれた針金をやさしくねじり取り、コルクを抜くと、中の発泡性の高い飲み物からわずかにガスが放たれる。あなたは、その気品あふれる飲み物がグラスに注がれる瞬間を楽しみに待つことだろう。しかし、これはシャンパンではない。これはグーズと呼ばれる魅力的で謎めいたベルギーのブレンドビールだ。グラスを持ち上げると、淡くかすんだ液体と、厚みのある白い泡(ヘッド)が目に入る。グラスを鼻に近づけると、酸味のあるフルーティーな香りが漂い、ウォッシュタイプのチーズ(訳注:熟成や風味を促進するために外皮を塩水や酒で洗いながら熟成させたチーズ)や土っぽい香りがほのかに感じられる。最初の一口を飲むと、非常にドライな口当たりで、酸味、フルーティーさ、カビまたは納屋のような風味(主に4-エチルグアイアコールと4-エチルフェノールによる)が感じられる。これは、これまでのビールでは体験したことのない、まったく新しい味わいだ。
グーズの歴史についてはさまざまな説や意見があり、はっきりとはわかっていないが、今日のような形でブレンドされ、瓶詰めされるようになったのは、おそらく19世紀中期から後期にかけてのことだと考えられている。一部の歴史家は、その瓶詰めが当時入手可能だった中古のシャンパンボトルと関係している可能性があると提言している。
グーズは、ランビックと呼ばれるビールの若いものと熟成されたものをブレンドした魔法のようなビールである。ランビックの原料には、通常60〜70%の大麦麦芽と、30〜40%の生の(麦芽化していない)小麦が使われる。生の小麦は、完成したビールの濁り、泡の形成、そして口当たりに役立つ。ランビックの醸造者は、苦味とホップの香りが少ない熟成ホップをボイルケトル(麦汁を沸騰させるための設備)で使用することを好む。煮沸した麦汁が冷めると、あとは自然に任せる。何十種類もの天然酵母とバクテリアが一晩かけて麦汁に取り込まれるが、なかでもおそらく最も特徴的なのはブレタノマイセス・ブルクセレンシスという酵母だろう。発酵が完了したランビックビールは、栗やオークの樽で1〜3年間(生産者によって異なる)熟成され、複雑な風味とアロマがさらに引き出される。こうして、グーズをつくるためにブレンドされるビールが誕生する。

ここからグーズのブレンドの技術が始まる。まるでマスターブレンダーと呼ばれる熟練のウイスキー職人のように、グーズのブレンダー(醸造者)は若いランビック(約1年熟成)と古いランビック(2〜3年熟成)の複数の樽を組み合わせる。若いランビックは、瓶詰め後にブレンドをさらに発展させるための新鮮で活発な酵母を提供し、また瓶内発酵に必要な発酵可能な糖分も含んでおり、これがスプリッツのような炭酸を生み出す鍵となる。古いランビックは樽の中でさらに熟成し、より酸味が強くドライな味わいを与える。最終的なブレンドは、ブレンダーの芸術と技術の産物である。瓶詰め後、グーズはさらに発酵し炭酸を生み出しながら、時間とともに味わいを変化させる。もし機会があれば、同じブレンドのグーズを何本か手に入れ、1年またはそれ以上の期間にわたって飲み、その変化を楽しむことをおすすめする。
筆者が初めてグーズを飲んだのは何年も前のことで、ベルギーのブリュッセルにあるカンティヨン醸造所であった。東京に住んでいたころは、渋谷にあるベルギービール専門店のベルゴでときどきグーズを飲むことができた。また、私のお気に入りのドゥリー・フォンティネン醸造所とベルビュー醸造所のグーズは、ヨーロッパやアメリカでも、探せば(主にワインショップのような小規模な専門店で)手に入る。
グーズはまさに独特なビールであり、その魅力は歴史や伝統、そして何よりも土地に根ざしている。ほかのビールとは全く異なる形で、あなたの感覚や想像力を刺激してくれるだろう。



