クリス・マカンバーは、横浜市にある里武士・馬車道(長野県のアングロ・ジャパニーズ・ブルーイングの一部)の醸造責任者である。
私が生まれ育った米国オレゴン州は、善良な市民が多く、さまざまなアウトドア・アクティビティへのアクセスも良く、地域の連帯意識も強く、最高の環境でした。また、歳を重ねるにつれて、オレゴンでつくられる素晴らしいビールも私の人生に大きな影響を与え、結果、私はプロのブルワーになりました。
21歳になるころ、故郷のセーラムからポートランドに引っ越しました。1990年の中頃にはすでに、ポートランド市内、そしてオレゴン州の至る所に素晴らしいブルワリーがいくつかあり、当時の私のお気に入りは、ポートランド・ブルーイング、ブリッジポート・ブルーイング、フルセイル・ブルーイング、そしてデシューツ・ブルワリーでした。クラフトビールに出合った初期のころは、さまざまなスタイルのビールを試し、ほとんどどれも好きでした。しかし、私の味覚が変化していくにつれ、コクがあり、麦芽の特徴が際立ち、そしてロースト(焙煎)したチョコレートの風味があるダーク(濃色)ビール、とくにポーターに自然と惹きつけられていきました。
英国発祥のポーターは、色は茶から黒色で、複雑な麦芽の特徴をもっています。BJCP(ビール審査員認定プログラム)のガイドラインによると、ポーターはイングリッシュ・ポーター(またはブラウン・ポーター)、アメリカン・ポーター(またはロブスト・ポーター)、そしてバルチック・ポーターの3つに分類されます。イングリッシュ・ポーターは、色は薄めで、焙煎の特徴は控えつつ、カラメルとチョコレートの風味がよく出ていることが多いです。いっぽうで、アメリカン・ポーターはもっと濃い色をしている傾向があり、焙煎香の利いたコーヒーやカラメル、チョコレートの風味が特徴的です。バルチック・ポーターは、明るめの色で、焙煎香はわずかですが、イングリッシュおよびアメリカン・ポーターよりもアルコール度数が高く、ラガー酵母を使って発酵されています。これら3つの一般に認められている分類以外にも、インペリアルポーター、バレルエイジド(樽熟成)ポーター、そしてコーヒー、ピーナッツバター、ココア、バニラなどの風味を加えたポーターなどがつくられています。
一般的に、ポーターの主原料となるのは、ややしっかりと焙燥されたペールモルト(淡色の麦芽)です。私がよく使うモルトはマリスオッターで、次に、個性を与えるためにミュンヘンモルトを少し加え、コクと甘味を与えるためにいくらかのデキストリンモルトを加えます。また、ポーターには通常、ダークモルト(濃色の麦芽)からくる苦味を調和し、キャラメルまたはタフィー(バターと糖蜜または砂糖を加熱して作るお菓子)のような風味を加えるために、かなりの量のカラメルモルトが使われています。私は複雑さを与えるために、さまざまな焙煎香や風味をもつ2〜3種類のカラメルモルトを加えることを好みます。それから、風味と色を与えるためにチョコレートモルトがよく使われています。出したい風味によっては、ブラックモルト、ローステッドバーレイ(焙煎された大麦)、カラファ・スペシャル・デハスクド・モルト(殻を取り除いてから焙煎したスペシャルモルト)、ブラックウィート(焙煎された小麦)などのダークモルトを使うこともできます。
私の考えでは、ホップはポーターの甘味を調和するのに重要な役割を果たすいっぽう、それほど目立つべきではないと思っています。フローラル(花の香り)やアーシー(大地や森を彷彿とさせる風味)の特徴をもつ伝統的なホップの品種がポーターに最適です。私のお気に入りは、イースト・ケント・ゴールディングまたはウィラメットです。
ポーターに使う酵母は、モルトの特徴を際立たせるために、当たり障りのない米国または英国の酵母株が最適です。発酵度は一般的に中程度から高めで、アルコール度数は5.0〜6.5%です。
デシューツ・ブルワリーのブラックビュートポーターは、私が初めて好きになったポーターです。バランスがうまくとれており、私が大好きなチョコレートやコーヒー、カラメルのような焙煎香を持ち合わせています。ヘレティック・ブルーイングのシャロウグレイヴポーターも素晴らしいビールで、ブルワーがモルトのみを使って生み出すチョコレートの味わいと香りは絶妙です。こちらも日本に輸入されています。国産のポーターでは、ブリマーブルーイングとスワンレイクビールがつくるポーターがお気に入りです。ブリマーのポーターは、分類としてはブラウンとロブスト・ポーターの中間だといえます。私が大好きな風味と特徴をすべて持ち合わせており、デシューツのブラックビュートの次に好きなポーターです。スワンレイクのポーターはバランスがうまくとれており、飲みやすく、このスタイルの模範的な存在です。
残念ながら、AJBと里武士・馬車道ではポーターを定番ビールとしては提供していませんが、ゆくゆくはダークビール(もちろんポーターを含む)をたくさん醸造していければと思います。私が次につくろうと思っているのはバニラポーターです。バニラは、チョコレートとカラメルの風味との相性がよく、ポーターをより一層美味しいものに仕上げてくれます。今度あなたがクラフトビールを飲むときは、ぜひポーターを手に取ってみてください。そして、横浜に来ることがあれば、ぜひ馬車道駅に直結した里武士・馬車道に立ち寄り、私たちのダークビールを試してください。乾杯!


