千葉市の潮風ブルーラボで最高醸造責任者を務めるクリス・ポエルによる。
私のことを少しでも知っている人は、私が大のホップ好きだということを知っている。ホップの心地よい香りとすっきりとした苦味に勝るものはない。これまで、嫌いなホップに出合ったことがない。まぁ、ソラチエースやクラスターなど、そこまで好きではないホップはいくつかあるが、総じてホップは神様からの贈り物だ。私のホップに対する熱い思いを聞けば、数ある素晴らしいビアスタイルの中で、私の一番のお気に入りはIPAだと思う人も多いかもしれない。
だが、それは完全な間違いだ。もちろん、IPAを飲むのは好きだし、誤解はしてほしくない。しかし私にとって、ホップがもたらす無上の喜びを表すのに最適なビールはアメリカンペールエールなのだ。米国を代表する、柑橘やフローラルの香りがするホップでつくられたビールは格別である。
伝統的なアメリカンペールエールはシンプルな麦芽がベースとなっており、たいていの場合ペール(淡色)麦芽と、少量のヴィエナ(ウィーン)もしくはミュンヘン麦芽、そしてスペシャルティ麦芽がほんの少し使われている。甘すぎても、辛口すぎてもいけない。このビールはバランスがすべてだ。個人的には、英国かドイツのペール麦芽を使うのを好むが、これらはほかの二条大麦からできた麦芽にはない、パンやビスケットのような風味をもたらしてくれるからだ。完璧なペールエールはアルコール度数が5.0~5.5%で、これくらいなら友人や同僚、見知らぬ人と夜遅くまで飲み明かしても、次の日の朝に後悔することはない。
しかしアメリカンペールエールにおいて、私の気持ちを高揚させるのは、なんといってもホップだ。柑橘の香りに花の香り。あぁ、たまらない。定番のホップの組み合わせが最高だ。カスケード、センテニアル、コロンバス、チヌーク、そして少しアマリロかシムコーで複雑さをプラスしたら、美しいペールエールのできあがりだ。最近の南国系ホップはここには必要ない。それらは流行りのセッションIPAかヘイジーIPAに使うといい(セッションIPAが洒落た新種のホップを使ったペールエールにすぎないことや、ヘイジーIPAがまったくIPAでないことに関して熱弁を振るうことはいくらでもできるが、血圧が上がってしまうし、あまり建設的でもないため控えておく)。
苦味は35 IBU(国際苦味単位)を目指すとちょうどいい。最初の麦汁段階に投入したり、あとでたっぷりのレイトホップ(煮沸直前に投入)、ワールプールホップ(沈殿槽に投入)、ドライホップ(2次発酵時に投入)をほどこしたりする。煮沸中に異なるタイミングでホップを投入することで、現代のペールエールにはみられない何層もの複雑さがもたらされる。いろいろなタイミングでホップを扱っていると、ペールエールがIPAの領域へと脱線することが起きてしまう。過剰ホッピングを避けるために、どれくらいの量が十分なのか見極める技術が必要だ。
私のペールエール愛は、シエラネバダが大きく貢献している。私が初めて飲んだ最高においしいクラフトビールで、今でもお気に入りの一つである。私にとってこのビールのバランスは完璧に近い。いつも新しいブルワリーに行くと、まずはそこのペールエールを探して飲む。それが美味しければほかのビールを飲むし、もしそのペールエールが私の基準以下だと、次の場所に向かう。
セッションIPAの方へ流されるブルワリーが増えてきているため、クラシックアメリカンペールエールを見つけるのは難しい。しかし、ベアードビールの「ライジングサンペールエール」は米国の柑橘系ホップの絶妙な組み合わせで、いつ飲んでも楽しませてくれる。ブリマーブルーイングもまた素晴らしいアメリカンペールエールをつくっており、飲んでみる価値が大いにある。また見つけるのは簡単ではないが、志賀高原ビールの「アフリカペールエール」も美味しい。
輸入ビールなら、ストーンブリューイングの見事なペールエールと、ファウンダーズの「オールデイ」(セッションIPAといわれているが、本質的にはまぎれもないペールエールだ)。また、オスカーブルースの「デールズペールエール」も外すわけにはいかない。これは米国ではじめて缶でリリースされたクラフトビールだ。
私は潮風ブルーラボを開業したとき、定番ラインナップとして伝統的なペールエールを必ず置くことを誓った。潮風のペールエールは「カスケードヤザマニ」といい、アルコール度数は5.5%、ホップの苦味は32 IBUを誇る。名前をみると、シングルホップエールのようだが、センテニアルで苦味を足し、さらに5つの異なる地区(フランス、ドイツ、ニュージーランド、ミシガン州、ワシントン州ヤキマ)から調達したカスケードホップをブレンドしたものを使っている。非常に魅力的なホップの複雑さが感じられ、満足のいく出来上がりだ。
そのホップのブレンドを際立たせるために、IREKS社のペール麦芽を約87%、IREKSヴィエナ麦芽を約10%使い、ほんの少しのライトクリスタルとアシッド(酸化)麦芽を加えている。そして最後に、ラルマン社のケルン・ケルシュ酵母を使って18度で発酵させる。この酵母がほどよい果実感をもたらし、ホップと麦芽にうまく調和する。
クラシックアメリカンペールエールは、暑い日も、涼しい日も、冬の寒い日にも、どんな日に飲んでも美味いビールだ。もし最近このビールを飲んでいないのなら、今すぐ飲んでみてほしい。あなたを裏切ることはないだろう。


