サーフィンをこよなく愛するフィリップ・グレレと仲間たちは、千葉の海で遊んだあとに地元のビールを持ち帰って楽しめたら最高だろう、といつも感じていた。ビーチスポーツをしたことがある人なら、きっとその気持ちがわかるはずだ。ならば、そんなビールを自分たちでつくってしまおう。彼らはそう考え、実際にブルワリーを立ち上げたのだった。
グレレは、どこか俳優のウディ・ハレルソンを思わせる雰囲気をまとっている。なかでも印象的なのが、いたずらっぽさのある少年のような笑顔だ。実際にインタビュー中も、彼は終始その笑顔を浮かべていた。自らの夢を形にしたのだから、当然かもしれない。彼は、千葉の海のすぐ近くにある海岸醸造の共同創業者兼共同オーナーであり、東京の下北沢と青葉台2店舗を構えるタップルーム「Coaster」も運営している。
海岸醸造がどのように誕生したのか、その経緯をお聞かせください。
最初からお話しすると、私たちの会社「COASTER株式会社」は、渋谷のクラフトビール店で酔っ払いながら交わした会話がきっかけで誕生しました。
それは面白いですね。実は、『JAPAN BEER TIMES』も同じような形で始まったんですよ。
(笑)私はもともとビールとビールづくりに情熱を持っていて、自分でも少し醸造をしていたんです。だから、いつか自分のブルワリーを持ちたいと思っていました。そんな中、渋谷のOIというお店のマネージャーと知り合い、彼の友人を紹介してもらいました。その友人は以前、青山のレストランでシェフをしていて、自分の店を持ちたいと考えていたんです。私たちは一緒に飲みながらいろいろ話すうちに、「それなら一緒にやろう!」ということになり、「まずはレストランとタップルームを始めて、ゆくゆくはブルワリーもつくろう!」と盛り上がりました。後日、冷静になってから再び集まり、きちんと事業計画を立てました。こうして誕生したのが、クラフトビールを提供する1店舗目のパブ「Coaster」です。2019年2月に下北沢でオープンしました。コロナ禍が始まる直前のタイミングだったので、決して順調なスタートとはいきませんでしたが、なんとか乗り越えて、下北沢に小さなコミュニティを築くことができました。
そしてその後、まさに夢に描いていた通りに、ブルワリーを立ち上げたんですね?
はい。コロナ禍の間、私は少し時間を持て余していて、ブルワリーの計画を前倒ししようと言ったんです。実は以前、千葉の田舎の海の近くにある古民家を購入していたので、それを活用することにしました。私たちの仲間の誰かが毎週末、時には平日にもサーフィンをしに通っていた場所だったんですよ。
古民家をブルワリーにするなんて素敵ですね!やはり、かなりの改修が必要だったんじゃないですか?
はい。その家は1898年に建てられたものなんです。隣には蔵(倉庫)があったのですが、かなり傷んでいました。それでも、なんとか再生させて、その一部を増築してブルワリーの設備を入れることにしました。伝統的な構造をできるだけ残しつつ、設備を整えていきました。
書類関係は、グレレさんが担当されたのですか?
役所関係の手続きはすべて私が担当しました。醸造免許の取得は少し苦労しましたね。というのも、メンバーの中に一人も日本人がいなかったので。でも、私は日本に住んで23年になるので、ある程度はわかっていました。工事は2020年の終わり頃に始まって、免許が下りたのは2022年1月。ちょうどその時に、最初の仕込みをおこないました。
最初の仕込みはどうでしたか? やっぱり初回は何かと気を使いますよね。
正直に言うと、最初の数バッチはあまりうまくいきませんでした。現在ヘッドブルワーを務めているメディ・ジェラは、もともとCoasterのシェフで、ビールに強い情熱を持っていたんです。彼はフランスに戻って1年間醸造について学び、帰国後に海岸醸造を一緒に立ち上げました。とはいえ当時は、あのレベルのプロ仕様の設備で本格的に醸造した経験がまだ十分にありませんでした。そのため、最初の頃は、友人でもある潮風ブルーラボブルワリーのクリス・プールに手伝ってもらいながら、新しい設備で何バッチか一緒に仕込みをおこないました。そこから少しずつ、技術を磨いていったんです。
それはビジネスにおいて間違いなく大切なことですね!
海岸醸造は、どちらかというとビジネスというより、情熱のプロジェクトなんです。もちろん、資金がなければ続けていけませんけどね! でも、利益だけを追い求めているわけではありません。自分たちが本当に飲みたいと思えるビールをつくることを大切にしています。それで実は、サワービールをたくさん仕込んでいて、みなさんにも気に入ってもらえたら嬉しいですね(笑)私たちは、常に新しいことを経験しようとしています。ここは田んぼに囲まれた場所で、周りにはたくさんの農家さんがいらっしゃいます。形が不揃いで市場には出せない果物や野菜をよく分けていただいているんです。
どんな種類の農産物をいただくことが多いんですか?
毎年仕込んでいるのが、サワー梅ビールです。それから、ゆずビールも毎年つくっていますし、柿を使ったビールもあります。一番変わったものだと、しいたけを使ったポーターですね。実はこれ、フランスのリヨン・ビールフェスティバルに出品した時に大成功を収め、みんなを驚かせました。煮沸の段階でしいたけの風味は抜けるので、驚くほど飲みやすくて美味しいんです。
旨味がしっかり残るんですね。
まさにその通りです! 旨味がしっかり感じられるんです。黒ラガーやポーター、スタウトがあまり得意でない方でも、これは美味しいと言ってくれます。今年もまた仕込むのが楽しみですね。それからもう一つ、今年も再び仕込む予定の季節限定ビールがあります。それがブルーベリーのサワービールです。500リットルの仕込みに、なんと100キロものブルーベリーを使用しているんですよ。
柿を使うときは、どんなスタイルのビールをベースにしているんですか?
ヘイジーIPAで仕込んでいます。酸化もなく、とてもきれいなオレンジ色に仕上がるんですよ。
サワーリング(酸味を加える工程)は、樽でおこないますか? それとも、乳酸菌を加えて発酵させることで、酸味を出していますか?
ケトルサワーで仕込んでいます。他の方法も試してみましたが、私たちにはこのやり方が一番しっくりきました。風味にも深みが出て、より複雑な味わいになるんです。私たちは常に自然な穀物を使っていて、それを袋に入れて、発酵中にケトルの中に浸します。とても自然な方法です。発酵には必ず3日かかるので、仕込みのスケジュールには多少制約が出ますが、そこはあまり気にしていません。大切なのは、美味しいビールをつくることですから。
発酵を待っている間は、やっぱりサーフィンをして過ごすんですか?
そうです(笑)
日本に来て23年になるとおっしゃていましたが、これまでどんなお仕事をされてきたんですか?
私が初めて日本に来たのは、南フランスにある会社からの派遣で、日本向けにトリュフを輸出する仕事に携わっていました。1年働いたあと、会社からフランスに戻るように言われたのですが、日本での暮らしが気に入っていて、もう少しここで働きながら自分に挑戦してみたいと思ったんです。その後、日本に残って別のフランスの食品会社に転職し、約10年間勤務しました。そこでの最後の2年間は、営業部長も務めました。さらにその後は、ジョンソン・エンド・ジョンソンという大手の消費財メーカーに8年間働き、現在はレッドブル・ジャパンで働いています。
レッドブルを使用したサワービールが登場する予定はないんですか?
いえ、残念ながらその予定はまだないですね(笑)でも、面白いアイデアですね。
それから先程、リヨン・ビールフェスティバルのことに触れていましたが、そのお話をもう少し詳しくお聞かせいただけますか?
最近では、いろいろなブルワリーが海岸醸造にコラボレーションのために訪れてくれるようになり、私たちもとても嬉しく思っています。コラボレーションは、仲間づくりの場であると同時に、技術を学び合う機会でもあります。南フランスにPRIZM BREWINGという大きなブルワリーがあるのですが、彼らが日本に来ることになった際、日本側のツアーを企画していた方が私たちのビールを気に入ってくれたことがきっかけで、彼らから連絡をもらいました。実際に来てくれた時には、私たちのブルワリーはもちろん、バーベキューやサーフィンが楽しめる環境をとても気に入ってくれました。PRIZMは、別会社を通じてフランス最大級のクラフトビール輸入業者でもあり、リヨンで開催されるビールフェスティバルに参加する際には、毎回海外のブルワリーを招いて、自社の輸入ネットワークをアピールしています。彼らが海岸醸造に来た際には、一緒にビールを仕込み、そのビールをフランスに輸入してフェスでも提供してくれました。さらに私たちにも参加を呼びかけてくれたので、現地に赴き、自分たちの海岸醸造ビールも持参しました。経済的にはかなり負担の大きい遠征でしたが、フランスの人たちは私たちのビールやデザインをとても気に入ってくれました。私たちは、商品ラベルのデザインに妖怪を取り入れていて、例えばIPAのOGAMA(大蝦蟇)のラベルには、口から煙を吐くカエルの妖怪が描かれています。フランスでは、こうした日本の伝統的なモチーフが現代風にデザインされていることに魅力を感じてくれる方が多くて、ビールの評判もとても良かったです。

メディ・ジェラさんについてもお聞かせください。もともとはシェフとして働いていて、それからブルワーになったとおっしゃっていましたよね。
彼が最初に日本に来たのは、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)のレストランを開くためでした。お店は長く続きませんでしたが、実際にはとても素晴らしいレストランだったんです。彼は本当に腕のいいシェフで、それが今、優れたブルワーとして活躍している理由の一つだと思っています。認めるのは悔しいですが、正直なところ、彼の方が私よりずっと美味しいビールをつくります(笑)ファラフェルのお店を閉めたあと、私たちは彼をCoasterのシェフとして迎えました。私たちはすごく気が合って、私がいつかブルワリーをやりたいと話したとき、彼も実は自分もブルワーになるのが夢だったと言ってくれたんです。2021年、彼はフランスに戻って1年間醸造を学び、日本に帰って来たのが、ブルワリーのオープン約半年前でした。そこからは、二人で設備の使い方からレシピの設計まで、すべてゼロから一緒に学んでいきました。
メディさんの他にも、関わっている方がいるとおっしゃっていましたよね。
ブルワリーの運営は、主にメディと私の二人で担っています。会社としてCoasterには中心メンバーが5人います。そのうち2人は、タップルーム2店舗の運営やスタッフのマネジメントに深く関わっています。残りの3人は、運営には関わらず、投資家として関与しています。
Coasterのタップルーム以外でも、ビールの販売はされていますか?
はい。主に東京近郊で販売しています。毎週木曜日にCoasterに納品し、そのあと他のバーやレストランにも配送しています。
サワービールは日本ではまだ少し珍しいですよね。評判はいいですか?
はい。サワービールも好評ですが、一番人気は先程もお話ししたヘイジーIPAのOGAMA(大蝦蟇)です。それから、KINTAMA(金玉)というIPL(インディアンペールラガー)も、名前のインパクトが強くて注目を集めています。もともとは、たぬきの金玉と名付けたのですが、ちょっと長すぎたので短くしました。イベントに参加した際に、その名前に笑ってくれる人が多くて、そのまま使うことにしたんです。他にも、小麦ビールのBAKEKUJIRA(化鯨)や、インペリアルスタウトのUMIBOZU(海坊主)などがあります。海坊主は、夜の海に現れて船を沈めるといわれる影の妖怪です。もう一つの定番ビールが、ウエストコーストIPAのSHOJO(猩々)です。これは、海水から酒を生み出す力を持つ赤い猿の妖怪にちなんでいます。サワービールはすべて季節限定で、その時に手に入る素材に合わせてつくっています。

話を古民家に戻しますが、もともとはプライベートの余暇のために購入された場所だとおっしゃいましたね。
はい。東京からそれほど遠くない田舎に、自分で改装して、ペンキを塗ったりできる家が欲しかったんです。でも、日本では古い家をあまり好まない人が多い印象を受け、不思議だなと感じています。確かに冬は寒いし夏は暑いですが、私にとってはまるでアンティークのように思えるんです。築100年以上の建物ですよ。そこには歴史や物語があります。独特の魅力があり、残しておきたくなります。実際、海岸醸造に来てくれるお客さんたちも、外国人はもちろん、日本人にもこの古民家はとても好評です。もともとは、週末や、波が良ければ平日にサーフィンを楽しむためのちょっとした隠れ家的な場所にするつもりでした。しかし今では、メディが週に3日はそこで暮らし、私も週末を中心に週に3日ほど通っています。
サーフィンをこよなく愛するフィリップ・グレレと仲間たちは、千葉の海で遊んだあとに地元のビールを持ち帰って楽しめたら最高だろう、といつも感じていた。ビーチスポーツをしたことがある人なら、きっとその気持ちがわかるはずだ。ならば、そんなビールを自分たちでつくってしまおう。彼らはそう考え、実際にブルワリーを立ち上げたのだった。
グレレは、どこか俳優のウディ・ハレルソンを思わせる雰囲気をまとっている。なかでも印象的なのが、いたずらっぽさのある少年のような笑顔だ。実際にインタビュー中も、彼は終始その笑顔を浮かべていた。自らの夢を形にしたのだから、当然かもしれない。彼は、千葉の海のすぐ近くにある海岸醸造の共同創業者兼共同オーナーであり、東京の下北沢と青葉台2店舗を構えるタップルーム「Coaster」も運営している。
海岸醸造がどのように誕生したのか、その経緯をお聞かせください。
最初からお話しすると、私たちの会社「COASTER株式会社」は、渋谷のクラフトビール店で酔っ払いながら交わした会話がきっかけで誕生しました。
それは面白いですね。実は、『JAPAN BEER TIMES』も同じような形で始まったんですよ。>
(笑)私はもともとビールとビールづくりに情熱を持っていて、自分でも少し醸造をしていたんです。だから、いつか自分のブルワリーを持ちたいと思っていました。そんな中、渋谷のOIというお店のマネージャーと知り合い、彼の友人を紹介してもらいました。その友人は以前、青山のレストランでシェフをしていて、自分の店を持ちたいと考えていたんです。私たちは一緒に飲みながらいろいろ話すうちに、「それなら一緒にやろう!」ということになり、「まずはレストランとタップルームを始めて、ゆくゆくはブルワリーもつくろう!」と盛り上がりました。後日、冷静になってから再び集まり、きちんと事業計画を立てました。こうして誕生したのが、クラフトビールを提供する1店舗目のパブ「Coaster」です。2019年2月に下北沢でオープンしました。コロナ禍が始まる直前のタイミングだったので、決して順調なスタートとはいきませんでしたが、なんとか乗り越えて、下北沢に小さなコミュニティを築くことができました。
そしてその後、まさに夢に描いていた通りに、ブルワリーを立ち上げたんですね?
はい。コロナ禍の間、私は少し時間を持て余していて、ブルワリーの計画を前倒ししようと言ったんです。実は以前、千葉の田舎の海の近くにある古民家を購入していたので、それを活用することにしました。私たちの仲間の誰かが毎週末、時には平日にもサーフィンをしに通っていた場所だったんですよ。
古民家をブルワリーにするなんて素敵ですね!やはり、かなりの改修が必要だったんじゃないですか?
はい。その家は1898年に建てられたものなんです。隣には蔵(倉庫)があったのですが、かなり傷んでいました。それでも、なんとか再生させて、その一部を増築してブルワリーの設備を入れることにしました。伝統的な構造をできるだけ残しつつ、設備を整えていきました。
書類関係は、グレレさんが担当されたのですか?
役所関係の手続きはすべて私が担当しました。醸造免許の取得は少し苦労しましたね。というのも、メンバーの中に一人も日本人がいなかったので。でも、私は日本に住んで23年になるので、ある程度はわかっていました。工事は2020年の終わり頃に始まって、免許が下りたのは2022年1月。ちょうどその時に、最初の仕込みをおこないました。
最初の仕込みはどうでしたか? やっぱり初回は何かと気を使いますよね。
正直に言うと、最初の数バッチはあまりうまくいきませんでした。現在ヘッドブルワーを務めているメディ・ジェラは、もともとCoasterのシェフで、ビールに強い情熱を持っていたんです。彼はフランスに戻って1年間醸造について学び、帰国後に海岸醸造を一緒に立ち上げました。とはいえ当時は、あのレベルのプロ仕様の設備で本格的に醸造した経験がまだ十分にありませんでした。そのため、最初の頃は、友人でもある潮風ブルーラボブルワリーのクリス・プールに手伝ってもらいながら、新しい設備で何バッチか一緒に仕込みをおこないました。そこから少しずつ、技術を磨いていったんです。
それはビジネスにおいて間違いなく大切なことですね!
海岸醸造は、どちらかというとビジネスというより、情熱のプロジェクトなんです。もちろん、資金がなければ続けていけませんけどね! でも、利益だけを追い求めているわけではありません。自分たちが本当に飲みたいと思えるビールをつくることを大切にしています。それで実は、サワービールをたくさん仕込んでいて、みなさんにも気に入ってもらえたら嬉しいですね(笑)私たちは、常に新しいことを経験しようとしています。ここは田んぼに囲まれた場所で、周りにはたくさんの農家さんがいらっしゃいます。形が不揃いで市場には出せない果物や野菜をよく分けていただいているんです。
どんな種類の農産物をいただくことが多いんですか?
毎年仕込んでいるのが、サワー梅ビールです。それから、ゆずビールも毎年つくっていますし、柿を使ったビールもあります。一番変わったものだと、しいたけを使ったポーターですね。実はこれ、フランスのリヨン・ビールフェスティバルに出品した時に大成功を収め、みんなを驚かせました。煮沸の段階でしいたけの風味は抜けるので、驚くほど飲みやすくて美味しいんです。

旨味がしっかり残るんですね。
まさにその通りです! 旨味がしっかり感じられるんです。黒ラガーやポーター、スタウトがあまり得意でない方でも、これは美味しいと言ってくれます。今年もまた仕込むのが楽しみですね。それからもう一つ、今年も再び仕込む予定の季節限定ビールがあります。それがブルーベリーのサワービールです。500リットルの仕込みに、なんと100キロものブルーベリーを使用しているんですよ。
柿を使うときは、どんなスタイルのビールをベースにしているんですか?
ヘイジーIPAで仕込んでいます。酸化もなく、とてもきれいなオレンジ色に仕上がるんですよ。
サワーリング(酸味を加える工程)は、樽でおこないますか? それとも、乳酸菌を加えて発酵させることで、酸味を出していますか?
ケトルサワーで仕込んでいます。他の方法も試してみましたが、私たちにはこのやり方が一番しっくりきました。風味にも深みが出て、より複雑な味わいになるんです。私たちは常に自然な穀物を使っていて、それを袋に入れて、発酵中にケトルの中に浸します。とても自然な方法です。発酵には必ず3日かかるので、仕込みのスケジュールには多少制約が出ますが、そこはあまり気にしていません。大切なのは、美味しいビールをつくることですから。
発酵を待っている間は、やっぱりサーフィンをして過ごすんですか?
そうです(笑)
日本に来て23年になるとおっしゃていましたが、これまでどんなお仕事をされてきたんですか?
私が初めて日本に来たのは、南フランスにある会社からの派遣で、日本向けにトリュフを輸出する仕事に携わっていました。1年働いたあと、会社からフランスに戻るように言われたのですが、日本での暮らしが気に入っていて、もう少しここで働きながら自分に挑戦してみたいと思ったんです。その後、日本に残って別のフランスの食品会社に転職し、約10年間勤務しました。そこでの最後の2年間は、営業部長も務めました。さらにその後は、ジョンソン・エンド・ジョンソンという大手の消費財メーカーに8年間働き、現在はレッドブル・ジャパンで働いています。
レッドブルを使用したサワービールが登場する予定はないんですか?
いえ、残念ながらその予定はまだないですね(笑)でも、面白いアイデアですね。
それから先程、リヨン・ビールフェスティバルのことに触れていましたが、そのお話をもう少し詳しくお聞かせいただけますか?
最近では、いろいろなブルワリーが海岸醸造にコラボレーションのために訪れてくれるようになり、私たちもとても嬉しく思っています。コラボレーションは、仲間づくりの場であると同時に、技術を学び合う機会でもあります。南フランスにPRIZM BREWINGという大きなブルワリーがあるのですが、彼らが日本に来ることになった際、日本側のツアーを企画していた方が私たちのビールを気に入ってくれたことがきっかけで、彼らから連絡をもらいました。実際に来てくれた時には、私たちのブルワリーはもちろん、バーベキューやサーフィンが楽しめる環境をとても気に入ってくれました。PRIZMは、別会社を通じてフランス最大級のクラフトビール輸入業者でもあり、リヨンで開催されるビールフェスティバルに参加する際には、毎回海外のブルワリーを招いて、自社の輸入ネットワークをアピールしています。彼らが海岸醸造に来た際には、一緒にビールを仕込み、そのビールをフランスに輸入してフェスでも提供してくれました。さらに私たちにも参加を呼びかけてくれたので、現地に赴き、自分たちの海岸醸造ビールも持参しました。経済的にはかなり負担の大きい遠征でしたが、フランスの人たちは私たちのビールやデザインをとても気に入ってくれました。私たちは、商品ラベルのデザインに妖怪を取り入れていて、例えばIPAのOGAMA(大蝦蟇)のラベルには、口から煙を吐くカエルの妖怪が描かれています。フランスでは、こうした日本の伝統的なモチーフが現代風にデザインされていることに魅力を感じてくれる方が多くて、ビールの評判もとても良かったです。
メディ・ジェラさんについてもお聞かせください。もともとはシェフとして働いていて、それからブルワーになったとおっしゃっていましたよね。
彼が最初に日本に来たのは、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)のレストランを開くためでした。お店は長く続きませんでしたが、実際にはとても素晴らしいレストランだったんです。彼は本当に腕のいいシェフで、それが今、優れたブルワーとして活躍している理由の一つだと思っています。認めるのは悔しいですが、正直なところ、彼の方が私よりずっと美味しいビールをつくります(笑)ファラフェルのお店を閉めたあと、私たちは彼をCoasterのシェフとして迎えました。私たちはすごく気が合って、私がいつかブルワリーをやりたいと話したとき、彼も実は自分もブルワーになるのが夢だったと言ってくれたんです。2021年、彼はフランスに戻って1年間醸造を学び、日本に帰って来たのが、ブルワリーのオープン約半年前でした。そこからは、二人で設備の使い方からレシピの設計まで、すべてゼロから一緒に学んでいきました。
メディさんの他にも、関わっている方がいるとおっしゃっていましたよね。
ブルワリーの運営は、主にメディと私の二人で担っています。会社としてCoasterには中心メンバーが5人います。そのうち2人は、タップルーム2店舗の運営やスタッフのマネジメントに深く関わっています。残りの3人は、運営には関わらず、投資家として関与しています。

Coasterのタップルーム以外でも、ビールの販売はされていますか?
はい。主に東京近郊で販売しています。毎週木曜日にCoasterに納品し、そのあと他のバーやレストランにも配送しています。
サワービールは日本ではまだ少し珍しいですよね。評判はいいですか?
はい。サワービールも好評ですが、一番人気は先程もお話ししたヘイジーIPAのOGAMA(大蝦蟇)です。それから、KINTAMA(金玉)というIPL(インディアンペールラガー)も、名前のインパクトが強くて注目を集めています。もともとは、たぬきの金玉と名付けたのですが、ちょっと長すぎたので短くしました。イベントに参加した際に、その名前に笑ってくれる人が多くて、そのまま使うことにしたんです。他にも、小麦ビールのBAKEKUJIRA(化鯨)や、インペリアルスタウトのUMIBOZU(海坊主)などがあります。海坊主は、夜の海に現れて船を沈めるといわれる影の妖怪です。もう一つの定番ビールが、ウエストコーストIPAのSHOJO(猩々)です。これは、海水から酒を生み出す力を持つ赤い猿の妖怪にちなんでいます。サワービールはすべて季節限定で、その時に手に入る素材に合わせてつくっています。
話を古民家に戻しますが、もともとはプライベートの余暇のために購入された場所だとおっしゃいましたね。
はい。東京からそれほど遠くない田舎に、自分で改装して、ペンキを塗ったりできる家が欲しかったんです。でも、日本では古い家をあまり好まない人が多い印象を受け、不思議だなと感じています。確かに冬は寒いし夏は暑いですが、私にとってはまるでアンティークのように思えるんです。築100年以上の建物ですよ。そこには歴史や物語があります。独特の魅力があり、残しておきたくなります。実際、海岸醸造に来てくれるお客さんたちも、外国人はもちろん、日本人にもこの古民家はとても好評です。もともとは、週末や、波が良ければ平日にサーフィンを楽しむためのちょっとした隠れ家的な場所にするつもりでした。しかし今では、メディが週に3日はそこで暮らし、私も週末を中心に週に3日ほど通っています。
とはいえ、ブルワリー自体はかなり田舎の場所にありますよね。オープンした時、地元の反応はどうでしたか?
最初の頃は、地元の人たちも一体何を始めるんだろうという感じで、少し懐疑的でした。しかし、私たちは地元の方々と関係を築きながら、地元の農産物を使ったり、ビールをおすそ分けしたりしてきました。年に一度、ブルワリーの敷地でフェスティバルを開催しているのですが、地元ではみんなで集まるようなイベントがあまりないので、喜んでもらえています。ブルワリーが地域の交流の場になっているんです。
ブルワリーにはテイスティングルームがありますか?
今ちょうどテイスティングルームを建設中で、今年の夏にオープン予定です。これまではテイクアウトのみの対応でしたが、現地で飲みたいという声を多くいただいていました。また、千葉県のビジネスコンペで入賞して地元メディアにも取り上げられたことで、今では毎週末、ふらっと数人の方が飲みに来てくださるようになったんです。そうした背景もあって、タップルームとビアガーデンをつくろうと決めました。自然と人が集まってきてくれるようになったからこそ、もっと気軽に立ち寄れる場所を提供したいと思ったんです。近くには千歳という小さな駅があって、そこから田んぼ道を歩いて10分ほどでここに到着します。この周辺には宿泊施設も多く、素敵なホテルもいくつかあるんですよ。
私も以前は鴨川でよくサーフィンをしていたんです。台風のうねりが入って、ダブルオーバーヘッド級の大波が立っているのを見て、「くそっ、今日は仕事があるのに」って思う日もありました。グレレさんにもそういう日はありますか? それとも、「今日は仕込みはやめて、サーフィンに行こう!」なんて日もあったりしますか?
今でも私は朝型で、夜10時に寝て、毎朝5時に起きています。波がいい日は、朝5時に仲間と一緒に海に行き、2時間ほどサーフィンをします。そのあとコーヒーを飲んで、8時頃から仕込みを始めることもあります。
今後の展望について教えてください。現在のブルワリーは比較的小規模(5バレルの設備)ですが、このままの規模でやっていく予定ですか? それとも拡大を考えていらっしゃいますか?
最初の頃は、地元の人たちも一体何を始めるんだろうという感じで、少し懐疑的でした。しかし、私たちは地元の方々と関係を築きながら、地元の農産物を使ったり、ビールをおすそ分けしたりしてきました。年に一度、ブルワリーの敷地でフェスティバルを開催しているのですが、地元ではみんなで集まるようなイベントがあまりないので、喜んでもらえています。ブルワリーが地域の交流の場になっているんです。
Coasterは現在、東京に2店舗展開されていますが、今後さらに店舗を増やす予定はありますか?
その予定ではあります。これまでの2店舗のCoasterも、それぞれ損益分岐点に達するまでに6〜8ヶ月ほどかかりました。新しいタップルームのオープンは本当に大変で、時間もお金をかかりますし、スタッフを見つけるのも大きな課題の一つです。先程もお話ししたように、私とメディの他に運営に深く関わっているパートナーが2人いるのですが、最近2号店をオープンしたばかりなので、きっと今はかなり疲れていると思います。なので、次の店舗を始める前に、少なくともあと1年くらいは休ませてあげようかなと考えています(笑)

ブルワリーにはテイスティングルームがありますか?
今ちょうどテイスティングルームを建設中で、今年の夏にオープン予定です。これまではテイクアウトのみの対応でしたが、現地で飲みたいという声を多くいただいていました。また、千葉県のビジネスコンペで入賞して地元メディアにも取り上げられたことで、今では毎週末、ふらっと数人の方が飲みに来てくださるようになったんです。そうした背景もあって、タップルームとビアガーデンをつくろうと決めました。自然と人が集まってきてくれるようになったからこそ、もっと気軽に立ち寄れる場所を提供したいと思ったんです。近くには千歳という小さな駅があって、そこから田んぼ道を歩いて10分ほどでここに到着します。この周辺には宿泊施設も多く、素敵なホテルもいくつかあるんですよ。
私も以前は鴨川でよくサーフィンをしていたんです。台風のうねりが入って、ダブルオーバーヘッド級の大波が立っているのを見て、「くそっ、今日は仕事があるのに」って思う日もありました。グレレさんにもそういう日はありますか? それとも、「今日は仕込みはやめて、サーフィンに行こう!」なんて日もあったりしますか?
今でも私は朝型で、夜10時に寝て、毎朝5時に起きています。波がいい日は、朝5時に仲間と一緒に海に行き、2時間ほどサーフィンをします。そのあとコーヒーを飲んで、8時頃から仕込みを始めることもあります。
今後の展望について教えてください。現在のブルワリーは比較的小規模(5バレルの設備)ですが、このままの規模でやっていく予定ですか? それとも拡大を考えていらっしゃいますか?
最近、一つ目の拡張工事が終わったところです。もともとの蔵の拡張部分をさらに広げ、カナダ製の缶詰ラインを新たに設置しました。以前は手動の充填機を使っていたのですが、缶ビールが好評だったので、本格的に投資することにしたんです。今後は、生産量を増やすために、10バレルのタンクをさらに3つ導入する予定です。
Coasterは現在、東京に2店舗展開されていますが、今後さらに店舗を増やす予定はありますか?
その予定ではあります。これまでの2店舗のCoasterも、それぞれ損益分岐点に達するまでに6〜8ヶ月ほどかかりました。新しいタップルームのオープンは本当に大変で、時間もお金をかかりますし、スタッフを見つけるのも大きな課題の一つです。先程もお話ししたように、私とメディの他に運営に深く関わっているパートナーが2人いるのですが、最近2号店をオープンしたばかりなので、きっと今はかなり疲れていると思います。なので、次の店舗を始める前に、少なくともあと1年くらいは休ませてあげようかなと考えています(笑)
グレレさん、本日はありがとうございました。きっと東京エリアのファンも、今後の展開を楽しみにしていると思います。いつか早朝のビーチで、サーフボードを抱えている私を見つけたら、ぜひ声をかけてくださいね。


