横浜ビールは1999年創業で市内で最も歴史の長いブルワリーだ。25年以上にわたり歴代のブルワーが繋いできた飲みやすく綺麗なビールは市民だけではなく多くのビアファンから愛されている。ビールを通して横浜の文化や人と出会い輪を広げていくことを目的とした地域とのコラボレーションも積極的に行い、みなとみらいを走るビアバイクやランニングクラブ、地元大学との活動など、横浜ビールを中心とした面白い取り組みが注目されている。
そんな彼らの取り組みの一つである「Brewers One Series」は、横浜ビールの醸造士一人一人が、今作りたいビールを表現し限定醸造する企画だ。今回は横浜ビールで醸造を担当する井田章一、加藤和樹、そして野垣裕子の三人にBrewers One Seriesへの想いを伺った。
ヘッドブルワーの井田は大学生の頃から横浜ビールでアルバイトをしていた経歴を持ち、ブルワー歴は10年。前任のヘッドブルワーが退職する際に、チャレンジをする場を作りたいという思いから始まったこの企画を通して、井田は横浜ビールにない味を生み出したいと考えたそうだ。その上で自分が飲みたいものが何なのかを考えていた時にフィリーサワーという酵母と出会い、使うことに決めた。フルーツの使い方を通して自分らしさを出せると考えて、井田といえばサワーと思われるような存在になりたいと語る彼は、横浜ビールで2022年に初めて醸造したサワーの「夢見るグレフルサワー」の進化版としてピンクグレープフルーツとブラッドオレンジを使用したサワー「目覚めるグレフルサワー」を作り上げた。名前には1代目が「夢見る」だったことから「目覚める」とストーリー性を持たせた遊び心が隠れている。次に選ばれたのは、横浜ビールの定番であるヴァイツェンにイチゴを使用した、ErdBEERe(エ ア トベーレ)で、ヴァイツェンの持つ甘味と酸味がイチゴと相性抜群だ。

同じくヘッドブルワーの加藤は、横浜ビールが得意とする伝統的なビールのスタイルを土台に、挑戦をしたいと考えている。Brewers Oneでは流行りのスタイルを含め驚きを大事にしたいそうで自分だけで作ったことがなかったスタイルや、いつか作りたいと思い続けていたものを選んでいる。「マシュマロフリーク」というペストリースタウトではマシュマロを使用せずにどう味わいを表現するか、レシピをかなりこだわったそうだ。アルコール度数が高いが、甘過ぎない飲みやすさに横浜ビールらしさが残っており人気が高かった。自分に課題を与えてそれをクリアすることに喜びがあり、これからも挑戦的なスタイルに横浜ビールのエッセンスを加えて醸造をしていきたいそうだ。
ブルワーの野垣は、アイルランドで飲まれているアイリッシュレッドエールというスタイルを基調に「とこなぎ」を作り上げた。とっつきやすく飲みやすい、「〜〜過ぎない」味わいを大事にしたいと思いレシピを綿密に考えた。横浜ビールだけではなく、他のお店で飲むこともあるため、そこから着想を得ることもあるそうだ。グビグビのめるビールが好みなため、今後も軽い飲み口のライスラガーなどに挑戦したいという。名前はAIと対話をしながら決めるというのが面白い。
Brewers One Seriesの発売日前日には横浜ビール一階のビアスタンドで開栓イベントをしており、新たなスタイルへの出会いを求めてファンで賑わうという。製造量としては950L前後で、缶では800本ほどの用意。近隣のバーや小売店で販売されることもあるが数に限りがあり同じビールには2度と出会えない可能性が高い。横浜ビールの挑戦的なビールとの一期一会を楽しんでみよう。


